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名古屋地方裁判所 昭和45年(ワ)3055号 判決 1971年12月22日

原告 林千春子

<ほか二名>

右三名訴訟代理人弁護士 内山賢治

右同 長谷川弘

被告 信藤静矢

右訴訟代理人弁護士 原田武彦

主文

1、原被告らの共有にかかる別紙目録(一)(二)記載の不動産はこれを競売に付し、その代金から競売費用を控除した金額を分割し、原被告らに各均一の配当をすることを命ずる。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告ら訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決を求め(た。)

≪省略≫

被告訴訟代理人は、請求棄却の判決を求め(た。)≪以下事実省略≫

理由

原・被告らが本件各不動産の所有権を、各持分四分の一の割合により共有していること、本件各不動産のうち建物が土地上に略一杯に建築されていること、原告らが被告に対し共有にかかる本件各不動産の分割について協議したが、協議が調わなかったこと、そこで原告らが被告を相手方として昭和四五年三月名古屋家庭裁判所に分割調停の申立をし、同庁昭和四五年(家イ)第四六七号事件として係属したが、不調に終ったことおよび本件訴訟において昭和四六年一月一八日から同年一二月八日まで一六回にわたり和解をつづけたが、原被告らの合意に達しなかったことは当事者間に争いがない。

ところで、本件土地は別紙目録(一)記載のとおり仮換地前の現況においては三筆に分かれ、その総面積は公簿上二四三・一九平方メートルであるが、仮換地後は二一九・〇七平方メートルとされているところ、≪証拠省略≫によると、その地形は北側間口六・四四メートル、奥行三六・二五メートルの細長いほぼ矩形の形をしており、北側の間口六・四四メートルのみが公道に面した、所謂うなぎの寝床となっている。そして、その地上に別紙目録(二)記載の一階面積一二三・六三平方メートル、二階三二・三九平方メートルの居宅のほか一階面積三九・三三平方メートル、二階同面積の土蔵、面積七・六〇平方メートルの湯殿、面積二九・七五平方メートルの物置合計二〇〇・三一平方メートルの建物が存在することが認められる。

以上の事実によると、本件土地上には本件建物が土地全体にわたって略一杯に建てられており、しかも、もし、現物分割の方法により分割後の各土地が公道に面するように分割するならば分割後の一区画は間口一・五〇メートル奥行三六・二五メートルの全く一区画では利用し難い地形となるし、またもし、本件土地を北から南に順次四分割するにしても最北端の土地のみが公道に面し、その余の土地は袋地となるので、共通の通路を必要とするところ、僅か六・四四メートルの間口から相当の通路間口分を奥行三〇メートル位もとってしまうことは全く土地の利用において無駄を生ぜしめることとなるうえ、地上建物も四分割しうるような建物ではなく、居宅・土蔵・湯殿・物置が一体となってはじめて利用に適する状況となっているから、現物分割は物理上可能であっても社会的・法律的には不能というほかはない。

そこで、他の共有者の持分を原被告らいずれか一人が他の者に対価を支払って全部取得する価格賠償の方法による分割についても考慮したが、≪証拠省略≫によれば本件各物件の価格は金一三、二一八、四四三円と評価されているところ、本件弁論・和解の経過に照らし被告が原告らに対し右金額の四分の三にあたる金九、九一三、八三二円もしくはこれに近い金銭を支払うことは不可能であり(被告側から金五〇〇万円を原告らに支払って一切解決したい旨の和解申入がなされたことは当裁判所に顕著なところである)、また原告らには被告に対し価格賠償金を支払う意思がなく、被告は右評価額の四分の一にあたる金三、三〇四、六一一円を受領したのみで同人の持分を譲渡する意思がないから、価格賠償の方法による分割も不能である。

そこで、結局、共有物である本件各不動産を他に売却し、その代金を分割する代金分割の方法による分割方法しか現実性がないところ、本件各不動産を競売に付するより任意売却する方が高価に売れて原被告らに有利であることが明らかであるから、当裁判所は昭和四六年一月一八日その趣旨も含めて和解勧告をし、本件口頭弁論終結日である同年一二月八日まで一六回に及んで和解の努力をしたが、その結論をうるに至らなかったことは当事者間に争いがない。

そうすると、結局、当裁判所としては本件各不動産の競売を命ずるほか本件の解決方法がない。

よって、原告らの本訴請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 丸尾武良)

<以下省略>

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